夏休みでもなんでもない、平日の昼下がりの旅。
観光地にも人の気配はなく、
まして山間の寺院になど誰も訪れるわけもなく。

PCの環境音で聴いていた川の流れとカジカの声を、久しぶりに生で聴いた。
木々も、もうすっかり夏。
軒に腰掛けて、暫くの間誰もいない境内の水音に耳を澄ませてみる。

追われないことと時間を気にしなくていいこと。
それだけで既に非日常甚だしいのに、漂う香の匂いがさらに
遠くへと誘ってくれるよう。

遠くにダムが見える。
いつぞや世界の終わりのような思いで
ダムを照らすオレンジの光を、ただ陽が沈むまで
見つめ続けていたことを思い出す。

なんだろうか。
ほんの4、5年前の話なのに、随分遠くへ歩いて来た
気がする。
山間の温泉に心ゆくまで沈んだ後、
もう既に頭に浮かびつつある風景を、これからどんなふうに描いて
ゆこうかと考え始めた。




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