薄暗い路地に引寄せられるようにして、扉を叩いた。

同じく薄暗く落ち着いた店内にて、
初めて憧れのカクテルを飲む。

「小樽はもうじき雪だ」
そう言いながら、バーテンに差し出された小さなグラスを
卓にとんと叩きつけ、
しゅわしゅわと溢れる酒をくいっと飲み干す。

その仕草をもう200回近くは見たのだろうか。
20年近く経って、やっとその名前を知ることが
できた。

特に美味しいとかそういうものではないと
バーテンさんは言っておられたが、
きっと今度も頼んでしまうだろう。

中年の男たちが自分たちの作品を小馬鹿にされつつも
、「おつかれさん」と言って飲む。
いつかそういうことが私にもあるのだろうか。

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