今宵、千里の片隅で。

日本最古のニュータウンの片隅で、 画家・待井健一は今日もちくちくと制作しています。

2014年07月

深山。

眼下の渓谷の水音と、カジカの鳴き声。
PCの環境音ではない生のカジカを聴くのは久しぶり。
遠く谷底から響く彼らの声の、
なんと美しいことか。
日本の秘境と呼ばれる深い渓谷は、
石垣も屋根も何もかもが深く鮮やかな緑に覆われていた。

しばし俗世を離れて、
地酒をちびりちびり。

個展を終えても焦って焦って早く早くという気持ちが抜けず、
暫らくしてそれがやや病的な域にあると気づいた。

深呼吸をして、遠くを眺めて、
少しずつ緩めて。
山深い地で、これから描く世界について考える。

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燃える西の彼方。

発作的に走り出したのは、ほんとうに知らない町だった。
飛行機がまだ低くを飛び、町中いたるところに自衛官がちゃりんこで走り回っている、
見たことのない地域。

戦後そのままのような古くて天井の低そうな集合住宅と、外車が何台も並ぶパレス
のような一戸建てとが無節操なまでに乱立するエリア。
なんだか町の正体がよくわからないままに一時間近く彷徨い続けて
汗だくになり、ようやく車に戻って帰りかけた時に見かけた景色がこれだった。

ふと後ろを見ると、買い物帰りの若い兄ちゃんも、子供の手を引いて帰る
おばちゃんも、みんな空をぽかんと見ていた。
自分以外に空を見上げている人がいる。
そんな光景は、それが日常茶飯事な芸大以外では本当に
珍しいことだった。
わけもなく、少し嬉しくなった。

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黒い塊のいない町。

外を走ったのは、締め切り直後に勢い余って路地を疾走して以来だったと思う。
驚いたのは、周囲があまりにも静かで穏やかだったということ。

「あれ?音がしない」と違和感を感じるほどの、感覚のズレだった。
そして初めて気づく。
つい先日まで路地を疾走していた時、私は常に何か得体の知れない圧力に
追いかけられているような感覚であったことを。
あまりにそれが日常化し過ぎて気づかなかっただけなのだろう。

しばらくサボっていたので体力的に衰え息も絶え絶えだっだけれど、
気持ち的には何処までも行けそうな気がした。

あのような状況下で創作することが、果たして正しかったのかどうか
未だにわからない。
ムンクではないが多少風景が歪んで見えていたには違いなかった。
でも、やはりそれを「そんなもんさ」と肯定したくはないものである。
少しでも楽しんで描いてゆける、そんな道を、
例え逃げ水のようなものであっても追いかけてゆきたい。

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待井健一

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