今宵、千里の片隅で。

日本最古のニュータウンの片隅で、 画家・待井健一は今日もちくちくと制作しています。

2014年05月

茨木侵食中。

ついにカーナビの地図を見て、
少しずつ現地の地形と景観が予測できるようになってきた。
次なる問題は、どこに「接岸」するか。
観光地でも市街地でもない場所というのは、
駐車場を探すのが切実な問題となる。

とりあえずやや離れた場所でもかまわないので駐車し、
そこから目的エリア目指してランニングで近づく。
そして現地で新たなパーキングが見つかれば、そこを記録しておいて
次回へのセーブポイントにするという方法論を試みるようになった。

この地域には、地図上に東西南北の規則的な碁盤道路が
ほぼひとつも見当たらなかったために選んだ。
まるでくもの巣のような路地は、おおよそ自宅近くのインターまでの
距離とは思えないくらいに田舎の景観を残している。

土壁と土蔵。家紋のついた豪邸群。
束の間、遥か遠くへ旅した気分を味わうことができた幸せ。

走ってるか、描いてるか。
前者を最大の気分転換にするには、もはやこれしかない。

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楽しさの原点。

久しぶりに路地に身を置いて描いた。制作時間約4時間半の激闘。
景色は穏やかなれど、鬼気迫る勢いで頭を回転させて筆を動かし
ただ描いた。
そうでもしないと、私程度の腕では1日で仕上がらない。

そして、けっこう全力で描いたものの、現地での完成度は70パーセントまで
漕ぎつけるのがやっという有様に終わった。
実際にはもっともっと細かい配管や手すりや石ころ・植物などが
わんさとある。
全てがちんがちんに描き入れたかったけれど、悲しいかな
締め切り直前の今、再び現地に飛ぶ時間がない。

ここに参加して、ほんとに個展間に合うのだろうか、という不安を
抱えつつ向かったけれど、
帰り際抱く感想は初めから予測がついていた。

やっぱり、描きに来てよかった。
風に吹かれ光を感じながら、ただ目の前の景色を写しとってゆくことの、
なんと幸せなことか。

これで、心置きなく大詰めに向き合える。

場所は比叡山坂本、石畳の街並み。
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ゆっくりと狂気。

愛車の中で雨音を聞くひとときというのが、たまらなく好き。
部屋にいるのとは違う、
屋外に箱ごと飛び出してそこにいるような感覚、
というのだろうか。

霞む湖とそれをのぞむ小高い丘。
強烈な眠気の中、ただ雨音だけがずっと
耳元に届いていて、
なんだかここから一歩も動けていないような
感覚が押し寄せてきた。

どんよりとした思考は、
締め切り前特有のものだと追い出そうとするのだが、
それは背中にどっしりと乗っかったままで、
やはり終わるまでは動いてくれそうにない。

いよいよ大詰め。
ここからは、ずっと昔からお世話になっている
「わけのわからない負のエネルギー」の出番だ。

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近郊の城砦都市。

自宅周辺から、見知らぬ場所がどんどん消えてゆく。
最初は軽い気持ちで始めた路地裏ランニングは次第に熱を帯び、
さらにまだ見たことのない景観を求めて遠く遠くへと広がり続けている。

主幹道路からほんのわずか外れたパーキングに適当に車を停めて
分け入ってみて驚いた。
おそらく何の変哲もない都市部だろうと思って北上してみると、
眼の前に軽自動車が滑り落ちそうな坂道が。
北以外の三方向を急な坂で囲まれたようにして佇むこのエリアは、
まさに住人以外まず寄り付かないであろう、まるで城砦のような
住宅地だった。

古びた家屋と細く曲がりくねった道。
時折覗ける眼下の街並み。
まるでここだけ尾道からジャンプしてきたかのようで、
ここ数ヶ月訪れた何処よりも心躍った。

それにしてもどんな地域なのだろうと、
自宅に帰り、初めてネットでその地名と由来を探してみたが、
何もそれらしい記述は出てこなかった。

何故ここがどこにも取り上げられることがないのだろうと、
走っているさなかにはぐるぐる考えたものだが、
走り終えて冷静になって、自らの阿保さを恥じた。
路地裏を縦横無尽に走り回って喜ぶ大人が、果たしてこの世に
何人いるというのか。


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時にご褒美。

これも初めて見る眺めだった。
水を張った田圃に夕陽がきらめく光景がこんなにも身近なところに
あったこと自体、しばし口を開けて眺めてしまうくらい
驚きだった。
道ゆく人たちが「こいつは何を撮ってるんだ」というような顔をするのを横目に、
一人ぽけーと西の彼方を見ていた。

締め切り迫る時期にこうして走ると、
いろんな思いに駆られる。
勿論何よりの気分転換になりはするが、
同時にアトリエで描く世界の何倍も美しいと思われる景色達に
やるせない程嫉妬したり。
またはここまで膨大な資料と情報をインプットしておいて、
今新たに描き出すわけにもいかないジレンマだったり。

しかし、夕風に吹かれながら自分の脚で走るこの1時間が、
今は正気を繋ぎとめてくれているのは確からしい。

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待井健一

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