今宵、千里の片隅で。

日本最古のニュータウンの片隅で、 画家・待井健一は今日もちくちくと制作しています。

2014年02月

黄昏ネバーランド。

地図上でずっと気になっている場所というのがある。
何年ももうずっと日常であるいつもの道と道の隙間、のようなところ。

よもやこのようにまとまった団地群が丘陵の上にあるなんて、
付近の景観からは想像だにできなかった。
私の住んでいるエリアよりもまだ新しい。
若い人たちがちらほらいて、沈み始めた陽を受けた箱の群れは、
まだ十分に現役で機能していた。
なんだか嬉しくて、それが幼少の頃の故郷を見るかのようだと気づいたのは、
ここを離れた後だった。

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やりすぎ。

この光景を見ればどの水族館かわかるということは、
それは唯一無二の立派な特色ということになるのだろう。
家族向けもしくは、内陸部にできた珍しさのみがウリなのかと思って
訪れてみたら、なかなかどうして。
最新の見せ方を巧みに取入れ、さらに未だ何処にもいないであろうものを
リサーチしたのではないかと思われるラインナップがそこかしこにあった。

まあしかし、赤目四十八滝の某施設にも、さすがにこんなにすし詰めの
サンショウウオはいなかった。
いつか野生のこやつらを見てみたいという私の憧れをよそに、
通勤電車のような様相でもみくちゃになった彼らが
出迎えてくれたのだった。 

あえてタカアシガニ系ではなく放射能で巨大化したような沢蟹みたいなのがいたり、
オコゼのバリエーションが妙に豊富だったりと、マニア心をくすぐる要素が
ちょこちょこ。

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そんなことも。

迷い込んでふと思い出した。
ここはかつて車で迷走した挙句引き返せなくなり、文字通り絶対絶命を味わった場所。

夜になって突然の豪雨に襲われ視界が全くきかない上路地はどんどん狭くなり、
挙句の果てにどこかのマンションの駐車場に紛れ込んでしまい、
自動感知した侵入禁止のチェーンで入り口を塞がれてしまったのだ。

全身滝を浴びたようにずぶぬれになりながら当直らしき警備員を探し出して入り口を開けてもらい、
そこからさらに車一台がギリギリこするかこすらないくらいの道をバックで延々切り替えしながら
脱出するという、本当にトラウマになりそうな夜だった。 

あれから車は2回チェンジし、もう何年経ったかすらわからなくなった。
木枯らしに吹かれながらお間抜けにも痛めた足を引きずりつつ、
ふとその時私は誰かといたのだろうかと記憶を手繰った。

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迷走も逃走も似たようなもの。

車であればわずか5分と少しの場所なのに、分け入って入るのは
もう思い出せないくらい昔。
日常のすぐそばに、ここはひっそりと隠れて眠っているようだった。

強い午後の陽射しが団地の隙間から射し込んで、
なんだかこれもふいに描きたいなと思った。

思えばこんなにも団地が好きなわりに、
そんなに沢山描けていない気がする。
以前は遠くの景色に団地を入れただけで、
そこはすぐに私の日常と地続きになってくれて、
それがなんだか面白かったのに。

この果ての見えない迷走、いつまで続くのか。
そう思いながら、まるで逃げるように階段を駆け上がった冬の日。 

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坂の多いこの町を。

木枯らしの吹く坂の街を黙々とひた走る午後。
描くか走るか食べるかの単純化された日々。

大勢の人たちが走っている、所謂マラソンコースからは随分を外れたルートを
走るのが好きらしい。
多少の危険は付いて回るも、やはり団地や路地の合間を縫い走るのが
私には理想のスタイルなのだ。
下校する小学生に突如「こんにちは」と丁寧に挨拶されてどぎまぎしたり、
曲がり角で突如現れた黒づくめの私におばちゃんが悲鳴を上げたり。

同じ景色のまま動かないルームランナー的なものに耐えられない身には、
移り変わる景色そのものがモチベーションになっているといっても
過言ではない。

今日の収穫は、ハイカラな団地郡のほんの少し奥に、
今まさに壊されんとしている古い集落を見つけたこと。
薄曇の空の下、どうしても絵に描いてみたい衝動に駆られた。


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プロフィール

待井健一

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