今宵、千里の片隅で。

日本最古のニュータウンの片隅で、 画家・待井健一は今日もちくちくと制作しています。

2013年08月

端島に惹かれ。

画像1


お盆の日曜日に、ビジネス街の真っ只中。
趣のある建物の中で、
軍艦島に関しての講演会を聞きに行く。

今まで自ら進んでこういった類のイベントに参加する人間ではなかったので、
休憩中にテラスから見渡す閑散とした
大阪のビル群が、
なんとも非現実だった。

何故急激にこの島に惹かれるようになったのか。
それはきっと、今自分の住む街で起こっていることと無関係ではないのだろう。

カーテンが取り払われ、昼間も真っ暗な団地群をあちこちで見かけるたび、
今のうち目に焼き付けておきたいと願う。
これはきっと転機であり、
創作に繋がる大きなヒントなのだ。

空白みたいな。

画像1


何気無い地元の、気づかなかった隙間のようなところ。
住んでいる人間じゃなければ、
わざわざマンションの谷間に入ってきたりしないのだろう。
この四方周囲全てくまなく知っているというのに、
まだ気づかないエリアがあったなんて、
本当に驚いた。

きっとそんな場所があることなど一生気づかないまま、というのが
身の回りにはまだまだあるに違いない。

独立国のような。

 IMG_3607


成熟したニュータウンを象徴するような眺め。
のように思えてならない。
夕刻ふと足が向いて、普段行くことのない隣の隣の町へと踏み込んでみた。

ここは付近では最後発で開拓された町らしく、
未だ空き室も目立たず、団地も塗り直されてきれいに使われている。
そして他に比べかなり高い樹木が目立つ。
おかげで団地群は、本当に緑の中に埋もれたように見えるのが
面白い。

ほんの1、2キロ離れただけで、
まるで違う町のよう。
丘陵の向こうに広がる空は、
もうすっかり夏だった。 

かえらぬ夏。

まさか人生でもう一度ここに入る機会があるなんて。

夏の陽射しを反射するリノリウムの床。
すすけた硝子越しの中庭。
手書きで書かれた給食の献立表。

何を見ても、
もうほとんど思い出せない。
転校したとはいえ四年もここに通ったのに、
そこを歩いた自分の姿が何ひとつ
浮かばないなんて。

ただ、この広いエリアを見て
「卓球 」という言葉と体操服が浮かんだだけ。
私は卓球部になど入ったことはないし、
とりわけ愛着があるわけでもない。

そのおそろしく曖昧で霧の中手探りするような記憶だけが、
今となってはここと私とを繋ぐ
手がかりとなっていた。

30年経って、
思えばもうここに通う子供がいる歳になっている。画像1

懐かしい行為。

IMG_3591


大学の職場が一区切りついた時、
以前は決まって帰りに京都に立ち寄ってラーメンを食べていた。

歳とともに「夜ラーメンを食べる」という行為そのものが
いろんな意味で危険となり、
しばらく自制していたのだが。

久しぶりにやってしまった。
昨日学生さんが言っていたのと似ている気がする。
なんだかすぐにそのまま帰りたくなくて、
いろんな余韻に浸りながら、
普段しない寄り道をしたくなるものなのだ。

ずっと以前から通っていた千本丸太町の有名店にて、
久しぶりの寄り道ラーメン。
まだうっすらと西日が残る外を見ながら、
カウンターで黙々と麺をすする。
つけ麺を前面におしている店だが、
なにげに私は中華そばのほうが美味しいと思っている。

何故だろう。
最近すぐ近くを通るわりに、
ずいぶんと母校にご無沙汰している。


 
プロフィール

待井健一

アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

カテゴリ別アーカイブ
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ