自分が普段描いてる構図そのものだなと思った瞬間。
肉眼で見ると、奥の水銀灯はもっと象徴的に見えていたのに。
冬枯れの京都、ひとけのない路地をゆく。
遠く大文字まで見渡せる高台にあるこのあたりは、
あまり使われていないとおぼしき個人宅もちらほら。
どこぞのように高層マンションなど建つはずもないこの区域は、
一度眺めのよい場所に住んでしまえば、ひょっとしたら未来永劫その眺めが
保障されてるんじゃあるまいか、
なんて贅沢な場所なんだと、
そんなことを考えてみたりしていた。
二階の窓辺に、まるで映画のセットのように黒猫が一匹鎮座していて、
ずっとこちらを見つめていた。
この眺めを見ながら育った猫なのか。
年の瀬の京都は、
なんだか幸せな気持ちになる。
一時期暮らしていたという微妙な距離感も、
それを加速させるのだろうか。
思い出せるようで思い出せない数々が、
ゆりかごのように今と昔を行き来させる。