今宵、千里の片隅で。

日本最古のニュータウンの片隅で、 画家・待井健一は今日もちくちくと制作しています。

2012年10月

blue

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陽がのぼる前というのは、ここ千里では
夜中よりも音がしなくて静か。
な気がする。
いつも無意識にどこかで聞こえている
遠い阪急電車の音がしないせいだろうか。

ライトのついていない水槽では、
普段水底でぐだぐだしている古代魚たちが
ひらりひらりと優雅に泳ぎ回る姿がよく見られる。
この楽しみは何物にも替え難い。

予想外に降り積もる雑務を片付けつつ、にじりにじりと
制作が進む。
今回気が早くも、既に来年のDMに使おうという絵を
描いている。
個人的には最近よく聴いているエレクトロニカの影響が
多分に入った、久しぶりに明るいブルーの
作品になりそうな予感。

新しい何かが生まれそうな時というのは、
やはり作家にとってはしんどくてもやめられない醍醐味なのだと
思う。

リアル20世紀少年。

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つい先日テレビで「20世紀少年」の特別版をやっていて、
もうすっかり中年になった大人たちによる小学校の同窓会というシーンが
あった。
一緒にお酒を飲んでいても「こいつ誰だったっけ??」みたいなことになっているのが
なんだか可笑しくて。

昨夜のあの、今までの人生のどの会合とも違う独特の空気感というのは、
しばらく忘れられそうにない。
知ってるのに知らない。知らないのになんだか知ってるような。
そんな曖昧な距離感から時間が経つにつれ、
当時の濃紺の学生服姿がレイヤーで重なるように思い出されてゆくと、
なんだか途方もない懐かしさに襲われた。

同じ世界に生きていても、
なんだかもう一度会えるなんて思っていなかったのだろう。
自分が当時どんなポジションにいたかをすっかり忘れてしまった私は、
「今と一緒でいいんだっけ?それとも全然違うキャラだったんだっけ」と
いらぬことに頭を悩ませ、分裂気味のまま2時間を過ごしてしまった。

それでも、思えば高校卒業以来女性の比率が圧倒的に多い環境にばかり
いたのに、
この男オンリーの真っ黒な圧力はすごく心地よかったのだった。
ああ、こんな場所にいたんだと。

案の定画家は私一人だった。
あの進学校にしておそらく前後10年かき集めても私だけだろう。

部活順にスピーチと言われて
「げっ 美術部俺一人やん」と思っていたら、
ちょんちょんと肩を叩かれ壇上に上げられたその
集まりはバレー部だった。
ここに入らなければきっとスポーツ刈りとか
一生縁がなかっただろうに、
すっかり抜け落ちていた。


来ちゃった。

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一年以上迷い続けて、ついにアトリエの水槽へ。
結局のところ、気になってどうしようかと思い続けるものは
手に入れてしまうのだと、今更ながらに思った。

小型種ではなく、中型に位置するポリプテルス・ウィークシー。
あまり人気があるように思えず、またコレクションされているという話を
聞いたこともない。

しかし、大きくなったものを見た時のインパクトが、私の何かを
射止めたらしい。
まるで丸太のようにコロコロのボディと、
完全に不釣合いなくらいに大きな頭。
デフォルメされてるとしか思えないその体型に、
他の種にはないかわいらしさを感じたのだった。

おそろしく成長が遅いとのことで、うちの子たちの中では
2番目に大きいも、しばらくはこのままいてくれそうだ。
願わくば水槽の半分以上を占拠したかつての暴君ジョニーのように、
理不尽な巨大化をしないことを祈るばかり。

しかし今回一番のインパクトだったのは、
投入して早々死にかけたこと。
入った途端に息ははあはあ、
口元が赤紫に染まり、口から何か出てるわ
胸鰭を閉じて瀕死の格好するわで、
一時はもう駄目かと思った。

これが後日水質変化による中毒だと聞かされ、
いくら強靭な種といえど水合わせに慎重になるにこしたことは
ないと再確認したのだった。

とりあえず愛着を込めて名前を「ドザエモン」にしようかと
半ば真剣に考えている。
おっとり、ゆっくり育っていってほしい。


後日談。

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どこをどう歩いたのか、ビジネス街のビルの谷間を縫い歩くうちに、
およそ10年ぶりにここへたどり着いていた。

平日の午後だというのに何かのイベントらしく屋台が立ち並び
大道芸人が技を披露し、
あちこちでビールを飲みながらくつろぐ人が。
川に隔てられて、ここだけ時間がゆるゆると流れているような気がして、
私もつられてのんびり気分。
思わぬところで日常のループを抜けることができて、
一人川べりを歩きながら深呼吸した。

締め切り間近とはいっても、個展直前のように追い詰められて
どうしようもないというわけではない。
そう考えると、ここで暖かい日差しを浴びながら
ビールなんか飲んでしまってもいいんだなんて思うと、
なんだか想像しただけで満たされてしまった。

中州の突端の芝生に、外人さんが一人気持ちよさそうに
うつぶせで日向ぼっこをしていた。
すぐに私と目が合った。
なんだか「人生もっと楽しみなよ」と言われた気がして、
私はなんだか苦笑いのようなよくわからない笑みを浮かべて、
そのまましばらく川風に吹かれてみた。

待井健一絵画展2012 西宮阪急


~個展のお知らせです。~

「待井健一絵画展 2012 西宮阪急」

(個展終了まで、この記事が先頭に表示されます)

西宮展DM - コピー



「日常と非日常の狭間、
「不思議で、でもどこか懐かしいあの町へ」

身近な景色を少し外れた路地裏で見つけたもの。
小さな旅の途中で出逢った素敵なもの。

そんなものたちを散りばめた、
アクリル+岩絵具で織り成す約25点の展示です。


阪急デパートでは初めての個展となります今回は、
前回大丸神戸展作品を中心に、新たに加筆修正された作品や、
懐かしい作品をまじえて展示させていただきます。
前回神戸展をご覧になっておられない方、
また「どこが変わったのか探してやろうじゃないか」という方、
是非足をお運びくださいませ。

ご来場、心よりお待ちしております。



*会期:2012年 10月3(水)~9(火)

*会場:西宮阪急 2階 アートギャラリー

*時間:10:00~20:00(ただし最終日は17:00までです)

*作家在廊日:10月6(土)・7(日)・8(月・祝)
          午後2時~7時(予)
プロフィール

待井健一

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