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奇跡のような瞬間だった。
あの街の時計塔というのは、これの何百倍大きなもの
なのだろうかと想像していた。
もうすっかり秋めいた空。
ドラマ「白い巨塔」をお昼に見た直後であったのが
少し笑える。

つい最近出た「北摂るるぶ」なるものを手に取って、
ふと記事の片隅に出ていた団地群に赴いてみた。

もうずっと前からすぐ下の道路を何100回となく行き来していたのに、
そこから上に上がったのは初めてだった。
山麓からさらに急階段を上へ上へ。
大阪平野が完全に眼下におさまるくらい高い場所に、
ひっそりと団地の群れがいた。

それは不思議な光景だった。
ここにある建物はどれも今下界で取り壊されているタイプと
同じ年代のものなのに、
おそろしいくらいに手入れが行き届いていて白く綺麗だった。
集会所も小奇麗で周囲の庭の手入れもされており、
ここだけが完全に別世界になっていた。
まさしく山麓に隠れた独立共和国のような趣き。

そしてこれも奇妙なのが、
地面は乾いた土ではなく、どれもしっとりと苔むしていたのである。
苔と真っ白な団地という、一見完全なミスマッチが、
この集落を一層非現実にしていた。

昨日の出来事を歩きながらゆっくりと振り返る。
アトリエで生まれたわが子の最後の行き着く先を、
幸運にも見ることができた日。
新築の大豪邸の玄関に住まうことを許されたその作品を久しぶりに見た時、
私はかつてないくらい自分の作品に対して
「わが子」という単語を思い浮かべていた。