今宵、千里の片隅で。

日本最古のニュータウンの片隅で、 画家・待井健一は今日もちくちくと制作しています。

そんなことも。

迷い込んでふと思い出した。
ここはかつて車で迷走した挙句引き返せなくなり、文字通り絶対絶命を味わった場所。

夜になって突然の豪雨に襲われ視界が全くきかない上路地はどんどん狭くなり、
挙句の果てにどこかのマンションの駐車場に紛れ込んでしまい、
自動感知した侵入禁止のチェーンで入り口を塞がれてしまったのだ。

全身滝を浴びたようにずぶぬれになりながら当直らしき警備員を探し出して入り口を開けてもらい、
そこからさらに車一台がギリギリこするかこすらないくらいの道をバックで延々切り替えしながら
脱出するという、本当にトラウマになりそうな夜だった。 

あれから車は2回チェンジし、もう何年経ったかすらわからなくなった。
木枯らしに吹かれながらお間抜けにも痛めた足を引きずりつつ、
ふとその時私は誰かといたのだろうかと記憶を手繰った。

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迷走も逃走も似たようなもの。

車であればわずか5分と少しの場所なのに、分け入って入るのは
もう思い出せないくらい昔。
日常のすぐそばに、ここはひっそりと隠れて眠っているようだった。

強い午後の陽射しが団地の隙間から射し込んで、
なんだかこれもふいに描きたいなと思った。

思えばこんなにも団地が好きなわりに、
そんなに沢山描けていない気がする。
以前は遠くの景色に団地を入れただけで、
そこはすぐに私の日常と地続きになってくれて、
それがなんだか面白かったのに。

この果ての見えない迷走、いつまで続くのか。
そう思いながら、まるで逃げるように階段を駆け上がった冬の日。 

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坂の多いこの町を。

木枯らしの吹く坂の街を黙々とひた走る午後。
描くか走るか食べるかの単純化された日々。

大勢の人たちが走っている、所謂マラソンコースからは随分を外れたルートを
走るのが好きらしい。
多少の危険は付いて回るも、やはり団地や路地の合間を縫い走るのが
私には理想のスタイルなのだ。
下校する小学生に突如「こんにちは」と丁寧に挨拶されてどぎまぎしたり、
曲がり角で突如現れた黒づくめの私におばちゃんが悲鳴を上げたり。

同じ景色のまま動かないルームランナー的なものに耐えられない身には、
移り変わる景色そのものがモチベーションになっているといっても
過言ではない。

今日の収穫は、ハイカラな団地郡のほんの少し奥に、
今まさに壊されんとしている古い集落を見つけたこと。
薄曇の空の下、どうしても絵に描いてみたい衝動に駆られた。


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ここは何処だか。

一度中断したものを再開する労力と気力の大きさは、
歳を経るごとに大きくなっている気がする。
それがランニングであれ、日々の仕事の修練であれ、
そして文面であれ。

ひとつ何かが途切れると、どういうわけか時間差で
ひとつ、またひとつの連鎖的に滞ってゆくのが
私の人生のようだ。

では、停滞したひとつの歯車を回せば逆もまた然りではないかと、
年が明けてから比較的小さなものから稼動させ始めている。

文章を書くというと大げさだけれども、
こういった行為もきっと走るのに似ていて、
ブランクを埋めるまでの数日というのが実に息も絶え絶え感が
ありそうで不安。

ふいに住んでいる街の付近を、縦横無尽に走り回るようになった。
それもマラソンコースっぽいところではなく、
住宅街やら路地やらをぐにゃぐにゃに抜けて。
だから、とりあえず坂を駆け上がって竹林に突っ込んでみたら
行き止まりだった、
なんてことはしょっちゅうある。
全く知らなかった町の眺めに沢山出遭えた。

思えば以前こんなことをしていたのは、今からもう10年以上前ということに
なるらしい。
泳げない身から数年経ち泳ぐ欲が減退し始めた今、
こうしてシフトしたのはある意味正解だったのかもしれない。

こうして新年もとっくに明けてしまった何の変哲もない一日に、
誰にも知られずひっそりと、こっそりと、
また歩みだす。

 
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強気な彼女。

彼女は、雨と共にやってきた。

 前より少し明るく鮮やかになったワイン色のボディ。
つり上がった切れ長の大きな目。

今時のコントローラのような小さなシフトとは無縁の、
ブーツを履いたいかついシフトノブ。

思えば先代モデルに代車で乗った時に、
そのあまりに俊敏かつ自在なフットワークに、
すでに私は一目ぼれしていたのだと思う。


早く旅に出たくなった。
いつも友人のノートにお世話になっていたけれど、
次の気まま男旅は、彼女の初陣に。

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別れの予感。

写真を整理していたら、思いがけずこんなものが出てきた。

この数字は今や120000を超えてしまった。 
長い間、仕事に行くにも旅行に行くにも、そして取材にも、
とにかく 途方もない時間を一緒に走ってきた。
四国の秘境やら信州の山々やら、非力なこの子には到底無茶だと思われる
おそろしい環境下で、文句ひとつ言わずに、本当によく走ってくれた。

彼女(だと私は思っている)との別れの時が近づいてきている。
 
 
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企画展参加のお知らせです。

(会期終わりまでこの記事が先頭に表示されます

まもなくですが、京都大丸店にて企画展に参加させていただきます
職場である成安造形大学にゆかりのある作家さん達による作品展です。

私も新作2点+夏の神戸個展に発表した作品に加筆修正を加えたも
数点を展示させていただきます。

秋の京都観光がてら、ご都合よろしければ
是非足をお運びくださいませ。

_______________________

滋賀・成安造形大学ゆかりの作家たち
「次世代へ連鎖する想像人 作品展」

会期:9月25(水)~10月1(火) (最終日5:00まで)
会場:大丸京都店 6階 美術画廊・アートスポット
在廊日:現在未定です

遠い、いつか改
 

得がたき縁。

 思えばもう15年に及ぶご縁。
お互いに随分と周りを取り巻く環境は変わったけれど、
こうして今も湖畔でお茶をしている。

いったいどれほど語り合えばこの会話は途切れるのだろう。
初対面から今に至るまでずっとこのまま・・・休憩で
車を降りた瞬間、連続でしゃべり過ぎて立ち眩んでよろけた。

少しずつ陽が色づいて、水際でカイツブリがひょこひょこと
遊んでいるのが見えた。

少し立ち止まって、これまでのこと、
これからのことを考えよ、
ということなのかもしれない。
母国語で心の声が聞こえるうちに、
とはなかなか見事な言い回し。

9ヶ月ぶんの滞留の大部分が押し流されて、
少しずつ次へ向けて歩き始める。

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水路の町をゆく。

以前観た映画に「 町の何処にいても水音が聞こえている 」というのがあったが、
ほんとうにそんな感じ。

大きな鯉の群れを、手を伸ばして撫でてみる。

山間の町には水路が張り巡らされ、
民謡とニッキの香り。画像1

遠い海辺。

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私はきっと、幼い頃からこの光景を知っていたのだと思う。
砂浜ではない、大好きな磯だらけの海岸。
当時ですら古めかしい鉄筋の商店たち。
赤い提灯の吊られた旅館は、なんだかいつもお祭りをしているのかと
思っていた。 

でも、この時見た海辺に続く道は記憶の中の
何処とも違っていて、
なにか日常からぷつりと途切れているかのようだった。

暗く荒れた海と、煌々と白んだ光を放つ月と。
日常とのリンクが切れる時って、
すごく視界がひらけている気がする。
見えていないはずのものまで見渡せる気がする、
そんな夏の夜。




 
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