今宵、千里の片隅で。

日本最古のニュータウンの片隅で、 画家・待井健一は今日もちくちくと制作しています。

ダブルドラゴン。

選びはしたが、まさかこんなにぴったりと模様が合うとは。
この種類は、縞模様やら虎柄やら斑模様から、はては全く模様のないものまで
実にバリエーションが豊富なのだが、
人気なのはどうしても縞模様のはっきり濃いタイプらしい。
わやわやと泳ぐ中から、数十分にらめっこをして
引き抜いてきた子達は、愛着ひとしお。

驚くべきことに、手前の子はつい数ヶ月前まで、
奥の子の半分程度しかなかった。
それが驚くべき成長スピードでどんどん大きくなり、
ついにほぼ並ぶに至った。
毎回この子達の個体差には驚かされるが、
まさかこんなにも成長速度に差があるとは。

筋肉質でグレー調のえまちゃんと、いかにもブリードっぽい風貌の
ぽて子。
いい夫婦になるかなどと思ったりした時期もあったものだが、
つい最近、
がっつり2匹とも野郎であることが判明。


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ハイツM。

かつてこんな見晴らしの良い場所に建つ
古いアパートがあった。
坂の町を彷徨った挙句たどり着いたそこは、
いろんな意味で世界の終わりのような景色に見えた。

ほとんどのポストがガムテープで塞がれている中、
わずかに残った端の部屋には、誰から来たのか
わからない郵便物がくちゃくちゃに詰め込まれていた。

そこにまだ人はいたのか、
それとも既に何処かに越したのにポストを塞ぎ忘れたのか、
今となってはわからない。
しかし、その場所はそれから作品の中に繰り返し登場することと
なった。

丘の上のアパートが取り壊されてしまって
もう5年以上は経つのだろう。
不思議とその時に見た空と空気の記憶だけは、
未だ筆で辿れるところにある。 

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夏休みのような気持ち。

ただアトリエではない何処か見知らぬところへ出たくて、
夕刻あてもなく車を走らせた。

ビジネス街らしきの細い通路は閑散としていて、
とにかく適当に車を停め、そのまま民家の合間を縫って走り出す。

5キロ以上走って少しずつ西日が傾き始めた頃、
ふと迷い込んだ丘からこれを見つけた。
何年か前の夏に麓まで行った、古い給水塔と誰も住む者のいない団地。
間近まで行ったものの写真を撮る位置もなく、入ることも出来ないため、
長らくここは電車で下から刹那眺めるだけになり、
いつしか忘れていたのだ。

ここから見る彼らは、間近で見るよりロマンチックだった。
周りの新しい住宅群に四方を囲まれながら、もう
ずっと長い間このまま。
こういった「あの建物っていったいなんだろう」
そして「近くまで行ったらどんなだろう」という素朴な感情が
私の原点なのだと、
汗を拭きながらつくづく思った。

そして、祝日の閑散としてキャンパスから
こっそり立ち去る。




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乱戦。

GW何処吹く風。
朝起きて制作し、お昼を食べて制作、
夕刻ジムに行って汗を流し、
また制作。

達成感について考える。
私の場合、描き始めが「いい!」と思えることはほぼ皆無。
特に中盤あたり、もうどうしようもないくらいよどんだ状態に
なっていて、
これだけ沢山描いていて、何故にまだここまで
ひどい作品を描けるのかと感動すら覚える。

が。
それをのたうち回ったり奇声を上げたりしながら
描いて直してまた描いて、
無理矢理気に入るところまで引きずって持ち上げてゆく。
その執念としつこさが報われた瞬間は、
確かに「達成感」と呼べるものを味わっている
気がするのだ。

まあ何事も先へ進めばそんなものさと割り切りながら、
あとひと頑張り。

・・・
これが後ろではなく、先であれば良いのだが。

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吹き抜ける遠い記憶。

ここへ来たのは、何年ぶりか。
かつては毎年のようにここへ沢山引率して点呼して、ビル風に吹かれながら奮闘する子達を見回っていた。

スケッチ場所が中崎町に変更されて、もう何年くらい経つのだろう。
年代をごちゃ混ぜに、いろんな子達のエピソードがふと蘇って、
少し胸が詰まった。

思えばあの頃の私はこんな形で昔を振り返ることになるなんて夢にも思ってなかったし、
本当に何も知らなかった。

締切が全て終わったら、
一人空中庭園で風に吹かれてみたい。

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プロヴァンス・・・?

方向感覚すらわからないくらいの、所謂預かり知らない場所というものが、
自宅周囲数キロ範囲からどんどん消えつつある。
こればかりは、まさに取材と気分転換を兼ねて
あちこちくまなく走り回っている自分の自己責任。

偶然車を停めた見知らぬ町を走り回る。
観光地でも何でもない、ただの生活空間を
分け入っていく行為は、
冷静に考えると甚だ怪しい。

そしてどれほど単なる住宅地だと思っていても、
必ず何か目を引くものがあるのは
ありがたいことである。

なんだか突然おフランスだか何処だかのような
一軒家がぽつんと。
個人宅・・・なのか何らかのお店なのか。
自分の住んでいる街をくまなく見たという人もまずはいまいが、
それ以上に「なりたちを知っている」なんて人も、
そうそういないのではあるまいか。

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近くて果てしなく遠い。


制作中に資料を漁っていたら、ふと紛れ込んでいた写真。
何気なく近所の夕暮れを撮ったものが、今になってこんなにも貴重な
ひとコマになるなんて、思いもしなかった。

もうここは跡形もない。
私が個人的に「下品マンション」と呼ぶ、
灰色やら赤茶色やらに塗られたマンション群に
埋め尽くされ、線路沿いの西日が届くことは、もうない。

確かここは、ホームレス中学生という映画に使われた場所だったはず。
ここを駆け下りてゆく主人公を観て、何も前情報がなかった私は、
いきなり徒歩5分圏内が全国版に映し出されたのを見て仰天したのだった。
そして、その時から既に「きっと、この映画に出てくる数々は
貴重な記録フィルムになるだろう」と思って、
愛しむように観ていた。

時間に追われ、大好きな団地群をテーマにした作品達はいまだ数少ないまま、
もうその8割以上が消失してしまった。
あと3年もしないうちに、この街は全く違う姿へと変貌するに違いない。
その時、私は果たしてここを故郷と呼べるのだろうか。 

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夕子を探しに。

ついに迷い込んだ、「2番目に好きな映画」のロケ地。

一番が小樽なら、ここもまた、勝るとも劣らない坂と路地の町。
そして間違いなく今まで訪れた中で、最も自分の描いている空気感に近い場所だった。
小樽同様、何故にもっと早くに訪れなかったのかと自問してしまいそうだが、
やはり憧れが強すぎる場所ほど実際に訪れるのは怖いもの。

主をなくして、縁側にただ猫がいるだけの廃屋。
路地と路地に挟まれたようにして建つ、いびつな民家。
ぐねぐねと生き物のように曲がりくねりながら上下する細い路地。
踏み込んで5分と経たずして「次はいつ来よう」と先を見てしまうような、
至福の空間に私はいた。

ずっと北のほうにばかり移り住みたいと憧れていたけれど、
この海辺の町は、あっという間に私の心をかっさらった。

えいやと飛んでゆくフットワークはないけれど、
とりあえず向こう数ヶ月はここの資料と空気で描けそうな気がする。

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黄昏ネバーランド。

地図上でずっと気になっている場所というのがある。
何年ももうずっと日常であるいつもの道と道の隙間、のようなところ。

よもやこのようにまとまった団地群が丘陵の上にあるなんて、
付近の景観からは想像だにできなかった。
私の住んでいるエリアよりもまだ新しい。
若い人たちがちらほらいて、沈み始めた陽を受けた箱の群れは、
まだ十分に現役で機能していた。
なんだか嬉しくて、それが幼少の頃の故郷を見るかのようだと気づいたのは、
ここを離れた後だった。

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やりすぎ。

この光景を見ればどの水族館かわかるということは、
それは唯一無二の立派な特色ということになるのだろう。
家族向けもしくは、内陸部にできた珍しさのみがウリなのかと思って
訪れてみたら、なかなかどうして。
最新の見せ方を巧みに取入れ、さらに未だ何処にもいないであろうものを
リサーチしたのではないかと思われるラインナップがそこかしこにあった。

まあしかし、赤目四十八滝の某施設にも、さすがにこんなにすし詰めの
サンショウウオはいなかった。
いつか野生のこやつらを見てみたいという私の憧れをよそに、
通勤電車のような様相でもみくちゃになった彼らが
出迎えてくれたのだった。 

あえてタカアシガニ系ではなく放射能で巨大化したような沢蟹みたいなのがいたり、
オコゼのバリエーションが妙に豊富だったりと、マニア心をくすぐる要素が
ちょこちょこ。

unnamed (8) 
プロフィール

待井健一

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